腸内フローラと3K【健康、環境、経済・社会】

腸内フローラと3K【健康、環境、経済・社会】

腸内フローラは、単に健康や疾病にとって重要であるということに止まらず、「経済・社会」や「環境」にとっても重要です。 21世紀は環境の時代といわれますが、ますます「腸内フローラ」の重要性が増しています。

腸内フローラと3K【健康、環境、経済・社会】

腸内フローラと老化

老化に伴う加齢性疾患の発症には様々な複合的な要因があげられるものの、その主要な原因として加齢とともに体内に蓄積する老化細胞が挙げられます。老化細胞とは生体内で「細胞老化」をおこして不可逆的に細胞増殖を停止した細胞であり、周囲に炎症をまき散らし、がんや動脈硬化、認知症など、加齢性疾患の原因となります。また、老化に伴う心身の機能低下としての病態として、フレイルやサルコペニアがあります。フレイルとは加齢による衰え全般のことですが、しばしば筋肉の衰えや萎縮(サルコペニア)を伴います。約半数の人はこのフレイルやサルコペニア状態を経て要介護に移行するといわれています。

 

 

ところで、体を守る免疫、癌細胞を攻撃する免疫の働きに腸が強く関与しています。腸は「免疫の司令塔」ともいわれていますが、加齢とともに善玉菌を代表とするビフィズス菌は減っていく傾向にあり、腸も加齢とともに老化します。世界的な腸内フローラの研究の潮流の中で、腸内フローラの免疫細胞が老化して機能が低下すると、炎症が心身の様々な組織で増悪(組織の老化細胞の増加、そして機能低下につながります)したり、腸内フローラ内の免疫状態が不安定になることにより、腸内フローラ自体の悪玉菌が増加(腸内フローラの老化)したりすることがわかってきました。例えば、筋肉にこの腸内フローラの免疫低下状態が影響すれば、炎症が起こりやすいために筋肉に大切な蛋白同化機能が阻害され、次第に筋萎縮が進みサルコペニアとなるでしょうし、生活に影響が及べばフレイルということになるでしょう。
このように様々な加齢性疾患及び健康状態(フレイルなど)が腸内細菌との関係が深いということが認識されるに従って、腸内フローラの重要性が認識されるようになっています。腸内フローラが制御できれば、加齢疾患の治療だけでなく,疾病予防・健康長寿がおおいに期待できます。「介護難民」の源を断つことが可能になり、経済、社会の安定につながります。このように腸内フローラは、健康(Kenkou)と経済・社会(Keizai,syakai)のハブ(HUB…中心、中核)となっています。

腸内フローラと環境…「生態学的転回」

実のところ、腸内フローラは、健康(Kenkou)と経済・社会(Keizai,syakai)のハブ(HUB)となっているだけではなく、環境(Kankyou)も合わせた3K(Kankyou,Keizai,Kenko)のHUBとなっています。腸内フローラと環境は密接に関連しています。

地球環境悪化と健康問題

PM2,5によって咳が出る、肌がかゆい、地球温暖化によって熱中症が増えた、オゾン層の破壊で皮膚炎を生じ皮膚癌が心配など日常生活でも地球環境の悪化が健康被害を招いていることを感じない日は無くなってきています。その中でも“地球温暖化“の影響が最も大きく、先にあげた熱中症だけではなく、暑熱ストレスを増加させ、死亡リスク自体を高め、その他、消化器系疾患、肝胆疾患、泌尿器系疾患等の様々な疾患リスクを増加させます。 特に、暑熱に対して脆弱性が高い高齢者への影響が顕著で健康寿命の延伸を妨げることになります。

生態学的転回とは

私たちの健康寿命に最も影響が大きいのがなんといっても「腸内フローラ」のあり方です。
そして、「腸内フローラ」は、「生態学的転回」にとって最も必要とされている情報源です。
“生態学的転回“とは、知覚・行為・コミュニケーションなどの経験に即しながら、環境と人間が織りなす世界に実在する情報をピックアップし、心身を発達・拡張することです。
ちょっと難しい定義が出てきてしまいましたが、すごく要約してしまうと、「環境を考慮し、それをどうやってとらえるか?」ということです。
“環境の悪化によって生じる「腸内フローラ」の病気または状態“は、単に「腹の調子が悪い」とか「腹を壊した」としてかたずけられ、実際に診断と治療がなされることは稀でした。例えば、ストレスや冷えの影響で下痢をすることはよくあることと思いますが、「たまたま偶然に」としてかたずけられ診断と治療はなされません。実のところ、環境の悪化「ストレスや気象の急速な変化、食品中の抗生物質など」によって、現在、沢山の不定愁訴が生れています。一見、関係なさそうな頭痛、めまい、気分の落ち込み、不眠、慢性的な痛みの増強、免疫力の低下、筋力低下、認知症の増悪も環境の悪化が腸内フローラに悪影響を及ぼした結果である可能性があります。もちろん、「今までは診断の方法もなかったし、何もしなくてもそのうちに改善すれば、それでいいのではないか」といわれる方もおられるでしょう。しかし、それでは、環境が悪化した現在、治療の対象でない例外状態がどんどん増えていき、その結果、東洋医学でいうところの「未病」が数多く生まれ、「健康寿命」が短くなってしまうということになりかねません。
ということで、「腸内フローラ」の状況を環境と私たち人間の織りなす実在する情報と捉えて、その情報を目に見える形として取り出せれば、心身を発達・拡張すること、すなはち「Well-being」や「創造的な活動」を可能とする手段を得ることになります。世界的な腸内フローラ研究の隆盛はこのような状況において「次世代シーケンサー」(腸内フローラの情報をピックアップ可能にする道具)の開発とともに進んでいます。
最近可能になってきた「腸内フローラ検査」は、「環境を考慮し、それをどうやってとらえるか?」という生態学的転回の第一歩といえます。その一歩を踏み出してみましょう。

環境悪化と腸内フローラ崩壊…ディスバイオーシスの例

21世紀、地球上で進む大気汚染、海洋汚染、水質汚染などは、腸内フローラの劣化及び老化を引き起こします。腸内フローラの老化は、全身の老化につながりますし、腸内フローラの崩壊(Dysbiosis…ディスバイオーシス)は、様々な全身の疾病や腸内フローラ自体の老化につながります。地球環境問題の1つとして海洋汚染があります。プラスチック問題をお聞きになったことがあるでしょう。鳥類の研究によりこのプラスチックが腸内のディスバイオーシスを起こす研究も科学的に探求されてきています。このように「腸内フローラ」は、健康(Kenkou)と経済・社会(Keizai,syakai)そして、環境(Kankyou)も合わせた3K(Kankyou,Keizai,Kenko)のHUBとなっており、環境の21世紀、世界的な重要課題となっています。
参考【Nature Asia |Nature Japan 注目のハイライト 環境:マイクロプラスチックの摂取が海鳥の腸内マイクロバイオームを変化させている可能性|Nature Ecology & Evolution.2023-03-28|https://www.natureasia.com/ja-jp/research/highlight/14438(参照2024-03-31)】

 

 
 
 

 

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